覚えていたはずなのに・・・
前回は、一時記憶を短期記憶に移し替える方法について話しました。
今回は、短期記憶を長期記憶に移し替える方法について話すことにします。
テスト前に苦労して英単語を覚えたのに、テストが終わったとたんに忘れてしまっているという経験はないでしょうか。また、定期テストではそれなりにいい点は取れているのに、実力テストになると点が取れないという人はいないでしょうか。
このように、覚えていたはずの英単語を忘れてしまったり、実力テストで点数が取れなかったりするのには理由があります。定期テストが終わって安心してしまったからではありません。
長期記憶のメカニズム
記憶の入り口の2つめにある短期記憶は、脳の中の「海馬」と呼ばれる場所にある、一時的に保存するための記憶装置で、記憶を保存できる期間は最大で1〜2週間です。
一方、記憶容量が1000兆項目分ある、記憶保存期間も長い長期記憶は、大脳新皮質の側頭葉と呼ばれる別の部分にあります。
短期記憶に置かれた情報のうち、脳が覚えておくに値すると判断した情報のみが、長期記憶に再び移動されます。短期記憶は1〜2週間しか記憶できませんから、長期記憶に移動しなかった情報は、そのままにしておくと自然に消滅してしまいます。
ですから、テストが終わった後そのままにしておけば、記憶は長期記憶に入ることなく消えてしまうのです。
そのため、短期記憶を長期記憶に移し替えなければ、実力テストの点数向上にはつながらないのです。
先ほど、短期記憶は海馬の中で行われると書きましたが、記憶の重要さを判断し、取捨選択しているのも海馬です。そのため、海馬に「これは長期的に記憶するべき重要な情報だ。」と判断させれば、長期記憶への扉が開かれることになるのです。
この。長期記憶への扉を開く方法は、次の通りです。
- 1. 復習すること
海馬は、その情報が繰り返されたかどうかによって、重要な情報かどうかを判断しています。一度きりの情報であれば、海馬は重要でないと判断し、短期記憶から長期記憶に移さず、そのまま忘れてしまいます。
そのため、覚えなければならないことは、繰り返しその情報を刺激として入れなければなりません。
その方法が「復習」です。復習をして、海馬に情報を送り続ければ、海馬は重要な情報として判断し、その内容を短期記憶から長期記憶に移します。
- 2. 期間を決めて複数回の復習をすること
復習はタイミングも大切です。勉強した直後ではあまり効果がありません。単調なことに脳が反応しなくなる可能性があるからです。逆に期間をあけ過ぎても意味がありません。それでは、いつ復習すれば良いでしょうか。
具体的な方法は次の通りです。
まず、学校で習った内容は、その日の夜に復習するようにしましょう。
また、夜に勉強した内容は、次の日の夜に復習するようにしましょう。
よく、「その日のうちに復習しなさい」と言われますが、これには理由があったのです。
なお復習は1回限りでは足りません。忘れてしまう前に反復することにより、長期記憶が育ちます。2回、3回と繰り返すことによって、脳細胞同士のつながりが強固になっていくのです。具体的には、その週の土日に復習をすれば効果的です。そして2回目からは、あまり多くの時間をかけなくても構いません。
その後の反復学習は、1週間後、1か月後というように、だんだん間隔を離していくと、効果的です。
- 3. 寝る前の暗記が効果的
睡眠が暗記に与える影響を調べるために、一つの実験が行われました。暗記を行った後、被験者の一方は眠らせておき、他方は通常のように目覚めさせておくという実験ですが、この実験から、記憶した後睡眠を取った方がよく覚えていることが証明されました。
記憶は睡眠中に定着するのです。
寝ている間に見る夢は、記憶の整理が行われている一つの表れという説があります。寝ている間に、その日覚えたことが整理されるのです。
就寝前の30分は、暗記、特に復習のためのゴールデンタイムです。この時間に、今日覚えたところを一通り目を通すようにすれば、効率よく短期記憶を長期記憶に写すことができます。
逆に睡眠前の30分間にマンガを読むなど勉強以外のことをしてしまいますと、そのことで頭がいっぱいになり、勉強が手につかないようになってしまいます。
成績向上を目指すなら、寝る前の復習を習慣づけましょう。
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